第11章 愛心
「恋人っていう夢から醒めて、
夫婦っていう現実を
見なくちゃいけなくなるんです。
今まで気ままにしていたのが、急に
運命を共にしなくちゃいけなくなるんですよ?
私は宇髄さんとならやっていけるけど、
宇髄さんは…私で本当にいいんですか?
私が相手じゃ頼りないんじゃないかと思えて…
怖いんです。力不足な気がして」
捲し立てる私に、大きなため息をついた。
「力不足って…そんなわけねぇだろ。
何だ。俺はてっきり、俺じゃ嫌なんだと…」
私の思いを知って、
一気に元気を取り戻した。
だって。声が、違う。
「俺、お前がいいっつったろ」
「だって、また変な事に巻き込まれるかも」
「何があったって俺が何とかする」
「朝寝坊するし、」
「それは俺のせいだ」
「ちょっとしたことで怒ったり」
「俺もすぐ怒る。愛するヤツの事でなら当然だ」
「ヤキモチも妬いて」
「何なら俺の方が妬くね」
「お料理、失敗することもあるかも」
「お前の作ったメシに失敗なんてねぇから」
「真っ黒焦げにするかも」
「それでも美味いって食う自信あるわ」
「お酒がぶ飲みして酔っ払って」
「酔ったお前が、これまた可愛いんだ」
「すぐ泣くし」
「そこも可愛い。優しく慰めてやるよ」
「っ…マイナス思考全開で」
「そんなもん、俺がプラスまで引っ張り上げる」
「昔のトラウマですぐおかしくなるし」
「それはお前のせいじゃねぇ。
しかもそれ、俺の愛でカバーできるから」
「〜〜……」
「ほらどうした。もう終わりか?」
宇髄さんは、
勝ち誇ったように笑う。
「言ったろ。
お前の言うダメなとこ、全部否定してやるって。
俺は全然ダメとは思わねぇけど。
睦の考える事なんてな
俺の愛の前では瑣末な事なんだよ。
俺をナメんじゃねぇ」
さっきから涙の止まらない、私の頬を掴み
自分の方を向かせて
ついでに涙を拭いてくれる。
「おい睦、目ぇ開けろ。俺を見ろ」
言われた通り、目を開けて見つめ合う。
この、ウソのないまっすぐな瞳に
どれだけ助けられただろう。
「お前は、俺とならやってけるんだろう?
ならその俺を信じてついてこい。
睦の不安ごと、抱きしめてやるから」