第52章 スルタンコラボ更に追加 〜睡蓮の願い〜
「強行突破しようとすんな。
ここは親父が大事にして来た国じゃねぇか。
それを何で俺に……」
あれ…もしかして…。
「そういう事です」
俺がある結論に行き着いた事に
アーディルはいち早く気がついた。
世代交代、と
そういう事なのか…?
「親父、どっか悪ィのか」
「そうなる前に、とのお考えです。
ですから今回は私がお供させて戴いたのです」
国王付きの執事であるアーディル、
しかも執事長であるこいつが直々に
俺のお目付役を買って出たというワケか。
「だから今回、王だけでなく
こちらの王子も
お顔を出していらっしゃるでしょう?」
「お前それはさぁ、
ここに着く前にしとく話だろうよ」
「申し訳ございません。欠落しておりました」
「うそつけ。お前ともあろう者が
そんな大事な事を忘れるワケがねぇ」
アーディルほどの男が…と続けると
少しの間の後に
「……私は話しましたけどね」
そんな言葉が降り注いで来た。
…
「なに?」
イスに座ったまま
背中にいるアーディルを仰ぎ見ると
めっちゃくちゃ呆れ返った目で
俺を見下ろしていた。
「あんたが上の空だったのよ。
行きのセスナで私はちゃんと言いました。
睦様の事を考えてる惚けたツラしてたから
こりゃムダだわと早々に切り上げただけであって
この件を知らないって言うなら
完全にあんたの落ち度だわ。
公務にまで支障をきたすなら、睦様との事
ちょっと考えなくちゃいけないわね」
やべぇ…!
「いや集中する!睦の事もちゃんとする!
公務はもっとちゃんとするから現状維持で!」
心を入れ替え立ち上がった俺を見て
アーディルは満足そうににっこり笑い
「我が国のため、国王様のために
しっかり働いて下さるのであれば
私は何も申す事はございません」
容認を約束してくれた。
あぁ、…ひと安心。
睦との逢瀬に制限がかかれば
俺はもう狂い出すだろう。
そしてアーディルは
俺が狂おうがどうなろうが
言った事は確実に遂行するのだ。