第49章 .☆.｡.:..期待:*・°☆.

呼吸が自由になった途端
自分のした事の大きさを知る…

「言ってません！いや言ったけど違います！」

「へー」

「音柱様が悪いんですよ！
命の危険を感じてたらねぇ
あんななってもおかしくありませんよ」

「睦も悪いんだぞ。
小せぇ事で頑なになりやがって」

「小さい事ならいいじゃありませんか！」

「俺以外の野郎の名前なんか呼ぶからだろ」

……

「は、はぁ…ヤキモチか」

「…そおだけどぉ⁉︎」

「ぎあぁああ」

私の失言に臍を曲げた音柱様が
再び私を押しつぶしにかかる。

「も…やぁ…いじわるばっかり…！」

なんならこのまま死んでやる。
そう思ってクタッと力を抜くと

次に慌てるのは音柱様の方で…


きっとやり過ぎたと思ったに違いない。

「睦…！」

肘を突き体を浮かせると
真剣な目をして私を窺った。

「優しくない音柱様なんか嫌い」

コロリと体を転がして
横向きになりうずくまる。
少し前まで
この人に追い込まれていた自分を思い出した。
すごく嫌な気持ちを。

最近優しくて
嬉しくて忘れていた。
でも植え付けられた嫌な気持ちは
そんなに簡単に失くせないみたい。

「きらい⁉︎」

「嫌い！」

「俺を？」

「きらい！……じゃない…」

くそぅ。
嫌いじゃない……


多少ホッとしたような息づかいが聞こえ
私は怒りきれない自分に苛立った。

「ごめん」

「知らないよ。
…呼び方なんかどうでもいいのに！」

「あぁどうでもいいよ。
睦を独り占めするための
単なる手段だからな」

薄々気づいていたけれど
本当にそうだったのか。
呼び名なんか
この人がいちいち気にするはずがない。

こうやって遊ぶための
ほんの口実だったに違いないのだ。

「睦、そこまで怒るなよ。
お遊びだって気づいてたろ？」

「知らない。嫌いです」

嫌いじゃないけど嫌いだよ。
許してなんてあげないからね。