第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
「帰る!」
睦を小脇に抱え
俺はスックと立ち上がった。
「へぇ…?帰る?帰るんですか?」
「もう帰ります。なぁんでだ?」
「えぇ!えぇと…うーんと…
2人きりになりたいから!」
「正解!」
「はぁ⁉︎うそでしょ!
イタイ冗談のつもりでしたけど!」
慌てふためいて
俺の腕から降りようともがく。
…無駄だと思うがな。
「本当だわ。お前さっきからなぁ
自覚がねぇんだよ、自覚が」
「何の?」
「俺を誘惑してんの?弄んでんの?」
「どっちもしてません!
音柱様が謝罪ばっかりするから
やめてほしかっただけです」
「なんだお前。名前はどうした」
さっきは俺のこと名前で呼んだくせに。
「あ!聞いてたの!
あれは恥ずかしすぎて後悔してます。
だから即刻やめました!」
「…んだとぉ…!」
俺の心に火ィ点けときながら
そこで引くとか有り得ねぇ。
覚えてやがれ…
「ほら、なんだって…?」
「っ…う、うぅ…お、おと、ばしらさま…っ」
呼んだ途端に
ちゅ、と口づけを落とされる。
「や、…っ」
「で?だれだっけ?」
「あの…っ!」
もうやめてくれという訴えを
即、口づけで塞がれた。
蝶屋敷で帰る宣言をした音柱様は
私を小脇に抱えたまま走り出し
あっという間に
私の家まで辿り着いた。
勝手知ったる…とでも言うのか
音柱様はなんの躊躇いもなく
2階にある私の部屋へと直行し、
前触れもなく私をベッドへと押し倒した。
両腕をそこへ押し付けて
体重をかけ身動きが取れないようにすると
グッと顔を寄せて、
『俺は誰だ』という謎かけ(?)を始めたのだ。
「さぁ、
そろそろ俺が誰だかわかるんじゃねぇの?」
意地悪な問い。
わざと寄せられた顔に
どうしたらいいかもうわからなくなっていた。
「おとばし、…っ」
そう呼んだら、
何をされるかなんて
もうわかりきっている。
なのに私は
口づけをされるよりも
この人の名を呼ぶことの方が照れるのだ。