第49章 .☆.。.:..期待:*・°☆.
音柱となってしばらくした頃。
蝶屋敷を訪れた際に、
一際目を引く隊士に出会した。
そいつは、
蝶の舞う庭を見渡せる縁側に、
数人の男隊士に囲まれるように座っていた。
にこにこと楽しそうに
隊士たちの話に耳を傾けるその顔には
確かに見覚えがあって。
長い髪を高い位置で結い上げ、
身に付けるは皆と同じ隊服。
日に透けてしまいそうな白い肌。
紅を引いているわけでもないのに
笑う唇は桜色…
座っていても小柄だと一目でわかるそいつは
どう見たってあの時の少女だった。
時が経ち、俺自身の傷も癒えかかっていた頃だ。
俺は大いに焦っていた。
家族や友人を失って、
鬼に恨みを持ち鬼殺隊に入ってくる人間は多い。
だがまさか、睦がそうするとは
夢にも思わなかった。
あまりにも、戦いには不向きだ。
いかにも非力そうな身体つき。
鬼を前に竦み上がっていた、
あの時の光景を思い出すと
鬼に立ち向かっていけるようには
到底思えなかったのだ。
ここを出て行った方がいい。
何より『俺が』そうして欲しかった。
だってそうだろ。
支えてくれる優しい男でも捕まえて
そいつと一緒になってよ、
可愛い子でもこさえて
新しい家庭を築けば良いじゃねぇか。
だが、最終選別を終え
勝ち残ってしまった事に変わりはない。
もう、様子を見るより他はなかった。
そうして、俺の予想に反し
睦はどんどん強くなって行った。
チビでガリの隊士がのし上がっていく噂は
鬼殺隊全体に広がっていく。
しかもなぜか、
男のフリをしているようなのだ。
女の隊士だってたくさんいる。
男でなくてはならない理由など
どこにもないというのに…。
あのちっこくて可愛いのが
男になんて見えるワケがねぇと思っていたが
周りに疑うヤツなんか1人もいなかった。
…ヘンなの。
まぁ、俺は知ってるからそう思うが
『男だ』と言われ、ウソだろとは
なかなか言えるモンでもないか。
ある時、
睦と仲良くなった甘露寺が
あいつが伸び悩んでいると俺に漏らした。
強い覚悟を持って臨んではいたものの
限界が来たのだろう。