第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
私に絡みつく長い腕が
先生が言う『嬉しい』のを物語っていた。
「好きな女に妬かれたら
嬉しいに決まってる」
「私はツラいもん」
「そうだろうな…
でも今までそんな事なかったろ?」
「ないよ。あるわけない、」
「誰も好きになんかなった事ねぇもんな?」
「うん。……」
先生の言いたい事がわかった気がして
私は顔を上げてみる。
すると案の定、幸せそうな瞳と出会した。
私の初恋が自分である事が
嬉しくてたまらないと、
そんな感じ…?
「俺のこと好きな証拠?」
「うん…」
「真っ当な反応だなぁ」
「そうかも」
好きなんだから、
ヤキモチも当たり前か…
だけど、
「先生ばっかりズルいね」
私だけが妬くのかぁ…
「俺を妬かせるだけのいい女になれよ」
「そんなの無理に決まってる」
即答した私に、先生はフッと笑う。
「わかってねぇなぁ…」
愛しげに細められた瞳を不思議に思い
首を傾げる私に、先生は啄むようなキスをした。
「なにを…?」
「いや、わからなくていいか…」
言葉にしなくても
私の機嫌が直った事が伝わったようだ。
私なんかよりよっぽどご機嫌になって
今度はしっとりと唇を重ねる。
何の事を言っているのかまったくわからないのに
それを解決するのよりも
こうして、
誰かに身を委ねている事の方が大事に思えた。
なんてね。
まぁ、
『誰か』って言ったって、
この人以外あり得ないんだけど。
妖しく続く口づけは
さっきまでの情事を思わせて、
危険を感じた私は
顎を持ち上げ自ら押し付けた後、
クッと引いてほんの少しの距離を取った。
「…ん…ね、先生、」
「……」
再び塞がれてしまいそうな口唇を
先生の頬に逃す。
「なんだよ」
何で逃げる?と
先生の声が言っている。
…喋れなくなっちゃうからだよ。
先生はやめないし、
私は流されるから…。
「も、休もう…?」
「眠たいか?」
「ん…怠い、」
でも嫌ではない。
怠いのに心地いいなんて初めてだ。