第48章 .☆.。.:..卒業*・°☆.
両手で自分の腕を抱きしめてうずくまる。
ちょっと落ち着くまで、
触れないでいてもらいたい…
「睦…?」
本格的にまずいと思ったのか
先生は私の上から
背中側へとズリ降りた。
私の頭のそばへと肘をつき
それを枕にして自分も横たわる。
先生の言っている事は本当なんだろう。
だけどあの時に聞こえて来たナギリの
楽しそうな声が耳から離れない。
わかってるよ。
ナギリは他の人のことが好きで、
先生とはなんでもないって。
でもわかってても
もやもやする事があるみたいだ。
ヤキモチなんて焼いた事ない。
誰かに嫉妬なんかした事がない。
だってそんな相手、
私にはいなかったから…
「先生は私だけのものなのに…っ」
「睦…」
「何で、…
手に入ってないみたいに思うのかな…
全然遠い人みたいで、…」
「たった今、お互いだけのモノになったろ?
俺の感触、残ってるよな…?」
「……」
「あいつの影が見えてイヤなんだったら
捨ててくれて構わねぇ。
新しいの買ってやる」
「……コレは、」
私は、自分の首に掛かっているものに
指先でそっと触れてみる。
「ん?」
「先生が、選んでくれた?」
「あぁ、そうだ」
「あの人の、ススメじゃなくて?」
「百鬼が、
りんごの事なんか知ってる筈ねぇだろ?
俺が見るたびに
リンゴジュースばっか飲んでるから
睦はりんごだなぁって
俺が思ったんだよ」
私がりんごって何よ…
でも、
じゃあコレは、
「先生が私のために選んだの?」
「そうだよ。ただそう思い付いたのが
ほんの数日前で、
ネットだと間に合いそうもなかったから
ついあいつに頼っちまった。
俺の間違いだったな、考えが足りなかった。
嫌な思いさせて悪かった…」
先生は全然悪くないのに、
バカな私のせいで謝るハメになっている。
…私は最悪な女だ。
「睦……抱きしめてもいいか?」
さっき、拒否した私に気を遣ってくれて…
余計にイヤな女に思えてくる。
いつからこんな、
偉そうな人間になったんだろう…