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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手












今朝は一段と冷えこむ。
雪でも降り出しそうな曇天。
あの神社までの道のりを、
私は小走りに進んでいた。

自分自身ですらわかり得なかったあの気持ちが
とうとう何者だったのかがわかった。
不死川さんへの、あの気持ちだ。

優しいのに、ちょっと尖った喋り方。
頭を撫でられた時、あの手に感じたもの。
普段は鋭い目を細めて笑う顔。
あれらは私にとって、大切な、もの、に
似ていた。
心の奥底に閉じ込めた記憶を呼び起こすほどに。

落葉樹の並ぶ神社の境内に、その人が立っていた。
足元には、あの仔犬。
葉を踏む足音に、こちらを振り返った。

やっぱり、いた。
私は予感的中の喜びで、つい駆け寄った。
少し手前で立ち止まり、

「その子、飼うことにしたんですか?」

警戒をしながらおチビさんを見つめた。
…こっちに、来ませんように…

「飼わねェよ。ここにいやがっただけだァ」

「そうですか…」

「何だァ?睦、犬ダメなのか」

「犬は…怖いです」

「はは、怖がりかァ。こんなチビ相手によォ」

——やっぱり、似てる。
私の、大好きな人に。

「不死川さん…昨日は、ごめんなさい」

「おォ。宇髄は大丈夫だったかよ」

不死川さんはおかしそうに笑う。

「あ…はい!すみませんでした!」

「睦の大切な人ってのがあいつだろ?
思っ切り嫉妬してやがったなァ」

くくっと喉を鳴らす。

「は…はぁ…」

「それで?」

真顔になった不死川さんは、
私の行動を読んでいたかのように誘ってくれる。
みんな鋭いなぁ…

「昨日、中途半端な事をしてしまったから…
ちゃんと説明をしようと思って…」

「あァ、そうだなァ。巻き添えを喰らった以上
知る権利くらいあらァな」

当然だというように笑い、
この間と同じ拝殿の階段に座るよう促した。

「だいぶ失礼な話なんですけど…
私、…不死川さんを好きだと思い込んでしまって…
初めて見かけた時も、ずっと気になって。
それがどうしてなのかもわからなかった。
でも、気になって仕方なかったんです」

不死川さんは隣で、
まるで懺悔でもするような私の話しを
黙って聞いてくれていた。

「この間、ここでご飯を食べた時も
すごく楽しくて…
宇髄さんいるのにどうしようって思ったくらいです」



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