第46章  .☆.｡.:.贖罪。.:*・°☆.

人混みの中でも、俺なら遠くまで見渡せる。

上背があるってのはいい。
守るべき者がそばにいる時は特に。

状況の把握が出来るに越した事はない。

「逃すな‼︎」

人波の向こうから尚も怒号が響いた。
行き交う人々が、一斉にそちらに顔を向け
地が割れていくかのように
道が開(ひら)けていく。

「止まれ‼︎」

その隙間を逃げるように
遠くから何者かが走って来た。

このまま行くと俺たちに直撃だ。

状況が飲み込めない睦は
キョロキョロと辺りを見渡して

「何でしょう？」

不安そうに俺にしがみつく。

「捕り物みてぇだな…
盗みでもしやがったか」

「えぇっ」

いけね…。

いたずらに不安を煽ってしまったようで
更に不安の色を濃くした睦。

「いや、ただの想像だ。
…だがこのままじゃ危ねぇ。
ちょっと避けるぞ、睦来い」

腕は組ませたまま
睦の前に回り込み
荷物を持った手で肩を抱いた。

何事かとざわめく人々は
少し狼狽えた様子だ。
通りの端に向かおうとするものの、
狼狽えたヤツらが邪魔をして
うまく進めずにいるうちに
走って来る人物はもう目の前まで迫っていた。

人目を気にしなくてもいいのなら
こいつ担いで屋根にでも飛び乗る所だが…
さすがにそれは
余計に混乱を招きそうだし。

「睦悪ィ」

「え？」

咄嗟にこちらを見上げた睦を
隙間なく抱きしめた。

もう逃げるのには時間がなさそうだ。
走り来る者から睦を守るため
そいつに背を向ける。

何を持っているか
わかったものではない。
刃物でも握っていられたら
睦を危険に曝す事になる。

一般人を伸(の)すのなんて簡単だが、
今はここに睦がいる。
いくら勝機がこちらにあったとしても
そばにいる睦を守るのが最優先だ。