第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
「そん、な…驚かんでも…」
驚いた私に驚いて
彼も固まってしまったようだった。
確かに自分でも
どうかと思うほどのビクつき方をしたと思う。
でもド緊張しているのです。
今更とお思いでしょうが…
「あ…ごめん…。な、なに?」
「いや、…なんだったかな…」
「なにそれ…」
おちょくってんのか。
でも、そんなふうには見えないや。
向こうも、思い切り強張ってるみたい…
ていうか
なんでこんな緊張してるの、2人して。
だいたいさ。
私はいいけどこの人は、
こんな緊張しぃじゃないはずじゃない?
つられるからやめてほしい。
いつもみたいに、
していて欲しい…
——いつもみたいに、できない…?
彼は思い直したように
プリンからパッと手を離し、
おもむろにソファに背中を預けた。
どうやら食べない事に決めたらしい。
手持ち無沙汰にしていたのを
ポケットにぎゅっと突っ込むと
そこに何かを見つけたようで、
「……そういやぁ、」
ぽつりと話し始めた。
「お前あの絵よぉ」
もたれたばかりの背中をぐっと起こし、
自分の膝にそれぞれの両肘を置いて
彼はお話モードに突入。
「あれホントはわたがしなんかじゃねぇんだろ。
何で否定しなかったんだよ」
あぁ、…気づいたの。
「だって、…あんなの、見た人の物でしょ」
私の言葉に…
彼はスッと表情を引かせて行った。
あっという間に無表情だ。
おかしな事、言ったかな。
「私が何と思って描いた所で
見る人が違うように見たら、
それはもうそれなんだよ」
「……はぁ?」
「だからぁ、私がコレ!と思って描いたって
見た人がわたがし!って思ったら
それはもうわたがしなんだってことよ」
そういう、こと。
「私がどう思っていようと
周りは関知しないんだ。
なら、なるようになればいい…」
——私が何を思って言ったかなんて
誰も知らないくせに。
なのに勝手に、
私が言った事と意味をはき違えて責める。
もう、好きにすればいいよ。
群れを作って、私を攻撃してれば。
「…お前、何の話してる?」