第44章 .☆.。.:.夏色.。.:*・°☆.
睦は不思議そうに
首をひねる。
「いつまでも
1人の人に拘るなって事じゃないの?」
「はぁ?」
「あれ?彼女がいる男が好きとか
イタイってことでしょ」
違う!
「俺にしとけばって言ってんだよ!」
「えぇ⁉︎」
掴まれていた腕を
ぺいっと投げ返された。
「何でよ、ヘンなの…」
不審そうに眉を寄せ
俺から距離を取る。
「私そんなバカじゃないし」
「何がバカなんだ」
「あっちダメならこっちみたいなの、
私しませんけど」
「お前じゃねぇよ。
俺がお前を好きなんだよ」
「え」
「あ」
…やっちまった。
高校に行くのは当たり前。
中卒なんかありえない。
と、
言ったのは母親だった。
自分の母親が、…
つまり私の祖母が、中卒で、
時代もあったのかもしれないけれど、
母は恥ずかしい思いをしたと言うのだ。
…祖母が中卒である事を
なぜ母が恥ずかしく思うのか
私にはさっぱりわからなかった。
祖母はとっても素敵な人だった。
私は祖母が大好きで、
お手玉をしたりおはじきをしたり、
小さな時、いつも一緒に遊んでもらった。
お出かけの時は
オシャレな帽子をちょこんと被り
身だしなみを整えて
背筋をピンと伸ばして…
色んなことに気を遣える祖母は
私の憧れだったくらい。
それなのに母は
祖母の存在も、私が祖母に懐くことも
煩わしかったらしくて
まったくいい顔をしなかった。
そんな理由で、
私は高校に通う事になった。
本当は、通信制の高校がよかったのに
そんな変則的なもの許さないと
普通の高校に行かされた。
通信制のなにが変則的なのかも
全然わからない。
母は、何か理由をつけたかっただけなのだ。
通信制だと私が家にいる事になるから
それが嫌なだけだったんだと思う。
私が外に出て行くなら
それが学校だろうが職場だろうが
何でも良かったんだ。
ただ働くとなると、
また母的には
世間体が悪かったんだろう。
そんな理由で通いはじめた高校。
人が怖かった。
楽しそうにしている人たちを見ているのは好き。
だけどあの中に入りたいとは
まったく思わなかった。