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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第9章 好敵手




「睦ちゃん、食べてる?」

蜜璃ちゃんは私の顔の前で片手を振ってみせた。

「あ、ごめんね、食べるね」

ぼーっとしていた私は
慌てて蜜璃ちゃんに笑いかける。

「どうしたの?何か悩み事?」

申し訳ないくらい心配そうに
私を覗き込んでくる蜜璃ちゃん。


「違うよ!ごめんね、ちょっと…」

「ちょっと…?」

——そう、ちょっと気になっただけだ。
入り口に1番近い席に座っている男性が。

こんな事を言うのはどうかと思うけど…
不似合いだ。
甘味を好む男性はいる。
おじちゃんも大好きだから
そんなの別に気にならない。
そして私は、見かけで判断するのは好きじゃない。

でも…顔も体も傷だらけ。
髪は逆立って、目力がすごい。
私たちより少し遅れてやって来たその人は
何やら落ち着かない様子でイスに浅く腰掛けていた。
腕組みをして思案顔。
…何を、食べるんだろう…。

私の視線を追った蜜璃ちゃんが
その人を見つけるなり

「不死川さん!」

ハートを飛ばして声をかけた。
…知り合いなのね…。
…宇髄さんの時も、こんなだった気がする。

不死川と呼ばれたその人は
目を細め、忌々しそうに小さく舌打ちをした。
…怖そうな人だけど。

そこへ店員さんが商品を包んだ袋を持ってきて
彼に手渡した。
その包みを受け取った瞬間、
彼の表情がフッと和らいだのを
私は見てしまった。
ほんの一瞬のこと、見逃してもおかしくないくらい。
でも私は、それに釘付けになった。

ずっと見つめている私の視線に気づいたのか
こちらを振り返る不死川サン。
私、どんな顔をしているのかなと思う程、
彼は驚いたような表情になっていった。

「不死川さん、何を買ったんですかぁ?」

蜜璃ちゃんが話しかけると、
我に返ったようにはっとして、
ふいっとそのまま出て行ってしまった。
——あーあ、行っちゃった。

「不死川さん、きっとおはぎを買ったんだわ」

無視された事など意に介さず蜜璃ちゃんは言った。
いつもの事なのかもしれない。

「あの人、おはぎが好きなの?」

「うん、そう聞いたことがあるの」

「へぇ…」

甘いものより辛いものが似合いそうなのにな。
やっぱり見かけによらないな…。
何となしにそんな事を考えていると
蜜璃ちゃんはまた私の前で手を振った。





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