第8章 続
「15の時に、あなたたちを嫁にもらったと
宇髄さんから聞きました。
随分時が経っているのに、
あなたたちはまだここに居る。
という事は、
お互い必要な存在なのではありませんか?」
無理に離れる必要があるのだろうか。
「実際、お三方がいて下さったおかげで、
私は助かりました」
「睦様…」
3人は惚けたように私を見ていた。
…美人3人組に見つめられると…照れるなぁ。
「後から現れた私の存在が疎ましいのであれば
成り立ちませんけど…」
「とんでもございません!
疎ましいなどあるはずがありません!」
「むしろ睦様の方が
嫌なんじゃありませんか?
形式上とはいえ嫁だなんて…」
「…はい。確かにいい気分はしません」
正直に言うと、3人は落胆したような、
納得したような顔をした。
「あの日聞いた時はあんまりにもショックでした。
宇髄さんの事、殴りつけました」
「…‼︎」
「睦様…!」
「あの天元様を…⁉︎」
3人は驚愕の表情を浮かべた。
「…当たり前です。
私は騙されていたも同然じゃないですか!
一言もそんな話ししてくれないで!」
私は怒りが再燃したのを感じた。
…でも…『睦』…
耳元で優しく名前を呼ばれた感覚が蘇って…
私は耳を、押さえた。
『睦…睦』
何度も囁かれる、甘い声で。
何、これ。
私は横を見たり振り返ったりするけれど、
誰も、いない。
私は頬が熱くなった。
「睦様、落ち着いて下さいまし」
「どうしたんですか?」
「いえ…何でも、ありません…」
「睦様、顔赤いですー」
「睦様、私たちの事、
寛大なお心で受け入れて下さって
ありがとうございます。睦様が
ご不快な思いをされないのであれば、私たちは
お2人のお手伝いをさせて頂きたいと思います。
私たちの心は、決して恋ではないのです。それは、
天元様が最初に釘を刺してくださったから。
自分の心には睦様がいると。
ですから、睦様が悲しい思いをされるのであれば、私たちは去ります」