第39章 輪廻〜if
少し絶望したような目でこちらを見る睦。
「…ここじゃ、だめなの?」
「ぁあ⁉︎ここ?は、まずいだろ。俺の家だぞ」
「何で?」
「男の家はまずいだろうが。
第一、お前がやだろ?
さっきみてぇに勘繰るだろうし、
ガッコのセンセイじゃ居心地悪ィだろうし」
「………」
「…あー、ひねくれて考えたなお前」
「あんなの冗談だって言ったのに…。
先生も私を見捨てるの……」
やっぱり!
「俺はウソは言わねぇの!
本気で言ったんだよ、
俺じゃやだろうなと思ったから。
ウソなんかついたら、後々めんどくせぇだろ?
知ってるよなお前は?
俺がそういうの好かねぇって。
色々テキトーに終わらせる事もあるがなぁ、
そうじゃねぇ事もあるってちゃんと弁えてんの」
「……うぅ、」
「勝手に勘違いして泣くな!」
泣くなよー…
抱きしめたくなるだろう?
手の届くとこで泣いてくれるな。
…知らねぇとこで泣かれんのもやだけどな。
でも俺が、
お前を抱きしめるなんてこと…出来ねぇよ。
「だから!あー…。どうすんだよ、っとに」
「ここがいい。先生しか信じない…」
「……なに?」
「助けるなって私は言ったのに
連れて来たのは先生でしょ!
最後まで責任持て!」
ぐしゃぐしゃに泣きじゃくりながら
可愛くねぇのに可愛い事を言いやがる。
なんなんだよ…!
「あー…じゃその話は保留だ。
教師が自分とこの生徒連れ込んだんじゃ
大問題になりかねないからな。
校長に相談!…どやされそうな案件だな。
理事長なら喜んで受け入れそうだがなぁ…
自分で撒いた種とはいえ、
めんどくせぇ事になりそうだな。
でもそれも睦のためならまた一興。
「まぁ、じゃあ後は…」
「……」
ズズッと鼻を啜って、
睦がこっちを見た。
こいつにとっては、1番ツラい話だ。
「…母親の事は、どうする」
思った通り、両手で顔を覆い、
声を殺して泣き出してしまった。
少し、待ってやるより仕方ない。
こんな決断、こいつに出来るのか…?
「…ごめんなさ、…」
そうしてやっと話せるようになったのは
約15分経った頃だった。