第39章 輪廻〜if
助けて欲しい
それを誰にも言えなくて
狭い部屋の中でうずくまっていた。
だけど
いつか飛び出していく機会を窺っていた。
誰かが送ってくれる合図を待ってた。
そうっと。
バレないように。
だけどその合図は
いつまで経ってもやってこなくて、
きっと私はこのままなんだと諦めた。
その矢先、
私の世界をひっくり返すくらいの
出来事が起こる。
だけど私はどうしていいかわからず、
結局その手を掴む事が出来なかった。
小さい時から、
頭を押さえつけられたまま暮らして来た。
自由なんてものはないのと同じ。
暗い闇は私に纏わりついて離れない。
それでもここから見える外の景色は美しい。
私の気持ちなんてまるでお構いなしに。
清々しいほどの青空は
私の心を晴れさせはしないし、
どれだけの大雨が降っても
この気持ちを洗い流してはくれなかった。
頼るものは何もない。
どんなに足掻いた所で、
未成年の私には、母しかいないのだ。
飛び出す勇気すらないのだから…。
おでこが痛い。
じくじく痛む。
朝食の時、お茶碗が飛んできて当たった。
何か、ヒステリックな声と一緒に。
よっぽどイライラしていたのか、
それとも男とうまく行っていないのか。
私にはよくわからなかった。
まさかそんな事になるとは思わなくて
思い切り油断していたんだ。
だっていつも、
体や顔に傷だけは作るなって
この人の方が言う側だからだ。
私が転んで擦り傷作って帰ると、
大丈夫かと言って
怖いくらい優しく手当てをしてくれる日と
わざと転んで来たんだろうと
烈火の如く怒鳴りつけられる日と…
対応はまちまちで、
どちらにせよ私には恐怖しかなかった。
その心配だって、
私の事を思ってではなくて…
『商品』としての価値を保つためで。
母は気分屋。
私は道具。
もう何年も、こんな日々を繰り返していた。
前髪を何度も指先で整えて
風が吹く度にそこを押さえながら教室に入ると
「おはよう睦」
声をかけてくれるクラスメイト。