第34章 反抗期
そうだよね。
そう、だろうけど…。
「おかしなこと、言ってるのはわかってる…
けど…天元は私の…っ‼︎」
布団に片肘を突いて
上体を起こしていた彼が、
不意に手を伸ばして
私の頸に指を這わせる。
そのまま引き寄せられ
私は布団に両手を突いた。
この両肘を曲げれば、
あの唇に届いてしまいそう…
でもそれじゃああまりにも度が過ぎる。
だって今朝まで、
ずぅっと一緒に居たっていうのに…。
だけど
それでもいい、なんて
…そんな事をどこかで考える。
やっぱりどっかおかしいんだ。
「弥生が素直んなりゃ、
お前もそうなっちまうのかよ…」
「えぇ…?」
「睦こそ、弥生にやきもちか?
相変わらずだなぁ…」
にこりと微笑まれ、
この心臓はドキッと跳ねる。
…いつまでこんなんでいるつもりなのよ。
初恋覚えたての少女じゃないんだから…。
さすがに自分で自分に呆れてしまう。
でも天元は、
そんな私を愛しげに見つめ
「まだまだ可愛いな。
今朝まで何してたか、覚えてる…?」
そんなの、覚えてるに決まってる。
今朝までは確実に、私だけの天元だったのに。
更に引き寄せられて
ほっぺた同士を擦り合わせられた。
よく知るそのぬくもりが
私のもやもやを解消してくれる。
こうしてないと、不安なのかもしれない。
情けない私。
「最初から、俺お前しか見てねぇのに」
何百回言われてきたかな、その台詞。
でも、
「余所見されると消えちゃうの」
天元が私以外を見た瞬間に
ツキンと心が痛む。
「どうしてくれるの…私ヘン…」
ばかみたいじゃない。
「ヘンじゃないだろ。
俺それ知ってるぞ?」
「知ってる…?」
ぎゅうっと腰を抱き寄せられ、
寝転んだままの天元の上に
乗っかる形になって、
いつもなら離れようと抵抗する所だけれど
今の私がそんな事をするはずがない。
「俺病だろ?」
「俺?」
何を言っているのか…。
「そう、天元病。やっと患ったの?
時間かかったなぁ」
「……何言ってるの…?」
「なんだ知らねぇの?
俺なんかガキの頃からずっと
睦病にかかったままなのに」