第34章 反抗期
「そうなのか?珍しいな」
天元は少しだけ私を離して
「…あんま根つめすぎんなよ?」
心配をしてくれる。
あんまり気が抜けて声もうまく出せずに、
でも返事をしなくちゃと思った私は
うんうんと頷いて見せた。
「…なんだろうな、このほっとけねぇ感じは」
きゅっと抱き直してくれる腕に、
存分に甘えたくなってしまう…
「…天元、」
「んー?」
間髪入れずに返事をしてくれた。
私の事を、甘やかしてくれる構え…?
なんて、都合よく考えたりして。
「今忙しい?」
「…あー…ヒマ、ではないな…」
「そっかぁ…」
少し肩を落とす私を見て、
「…ただ不思議な事に、
この世でただ1人、睦のためなら
時間が空くんだよな」
取り繕うような台詞を吐く。
ツと見上げた私に
極上の笑みを浮かべて
「可愛く甘えてみな?」
簡単に誘惑してくれた。
だから、
「少しだけ、このままいさせて…」
素直に誘われてみる。
すると、
「少しだけなんて言わず、
ずっとでもいいぜ…?」
何故か天元の方が嬉しそうにして
私の身体を強く抱きしめてくれた。
「調子いいな…ヒマじゃないんでしょ?」
変わり身の早さについ笑ってしまった。
「ばかだな、たった今ヒマになったんだよ。
…いやいや
睦抱きしめなきゃならなくなったから
むしろ忙しくなっちまったな」
得意げに言って
そうっと髪を撫でてくれる。
あぁ…天元だ…
もうこの感謝をどうやって伝えよう…
「いつもそばにいてくれて、ありがと…」
「ん?…あぁ」
突然の言葉も、笑って受け入れてくれる。
意味を理解するよりも先に
私の事を無条件で受け止めてくれる。
きっと、こんなに
私の都合のいいようにしてくれる人はいない。
「だぁいすき」
「あぁ…。大好きな時は?」
「え?」
意味深な問いに、つい顔を上げる。
すると
もうすでに目の前にあった天元の顔が
更に近くまで迫り、
優しく口唇が重なった。
ふわっと広がる彼の香りと
離しがたいぬくもりが私を支配する。
だから彼の腰に腕を回して身を寄せた。
私が逃げない事を確認してから
天元は私の唇を弄び始める。