第31章 ゆめのとちゅう
★彡
ぱちりと目が覚めて、
隣に愛しい人を見つけた。
ほっとしてもう1度目を閉じると
ぎゅっと抱きしめられる。
…起きているのかな。
それとも無意識に?
見た感じ眠ってる。
…どちらにせよ
こうやって抱きしめられるのは心地いい。
だから、私はそのまま動かずにいた。
ずうっとこのままでいたい。
ずうっと…。
「睦」
呼ばれて目を開けた。
…あれ…?
「ここ、どこ?」
「はぁ?」
天元はびっくりしている。
でも、私もびっくりしてるの。
「どうした睦。大丈夫か?」
繋いだ手に力が入った。
「……」
「何だ、歩きながら寝てたのか?」
おもしろそうに笑う天元。
川のせせらぎ。
大きな桜。
あれ、この道…
「私のうち?」
私のうちに向かっている。
「あぁ、ちょっと様子見に行こうって
お前が言い出したんだろ?」
「…そっか」
そうだった。
確かに気になっていた。
ずっと行っていなかったし、
せっかく綺麗にしてもらったのに
ほったらかしだったから。
「大丈夫なのか?」
ぼーっとしたままの私を見て
天元は笑顔を引っこめた。
「うん…大丈夫」
「ならいいが…ムリすんなよ?
今日でなくても、いつでも行ける」
「ありがと。でももうすぐだし…」
どうしてもおかしいなら、
うちで休めばいいだけのこと。
「まぁ、そうだがな」
天元はあまり納得しない様子で私を見下ろした。
「元気だよ、ありがとう。
ちょっとボーっとするけど、
天元がいてくれるから大丈夫、でしょ?」
わざとそんな言い回しをして
私が笑顔を見せると少しだけ安心したのか
「おぉ」
私の手を引っ張り、
うちまでの道を少しだけ急いだ。
部屋に入ると、何日も締め切っているだけあって
さすがに空気が淀んでいた。
私はすぐに雨戸を開けて空気の入れ替えをした。
後からゆっくり来た天元はあちこちを眺めて
「もう何年も来てねぇような気がするな」
と、私が思っていた事もぴったり同じことを言った。
——どうしてかな。
なんだか別の場所に来たみたい…。