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【鬼滅の刃】予定調和【宇髄天元】

第6章 回想2




何も言わねぇそいつに目を向ける。
見るからに『どうしたらいいかわからない』といった様子のそいつ。
俺よりも少し幼いその娘は
口がきけねぇのかと思うくらいに
ただ呆けている。

「お前何だ。何見てやがる」

不躾な視線が余計に俺を苛立たせた。
するとそいつは唐突に

「…ごめんなさい」

と謝ってくるではないか。
…謝るのかよ。
変なヤツ。

「…ここ、お前の隠れ家か」

俺は特に興味の湧かねぇその娘から目をそらし
再び的当てをする。
俺の手を放れたクナイは、的の真ん中に…
当たるわけがねぇ。
もう、どうでもいい。

「はぁ…だーめだ」

こんなんして、何か意味あんのか…。
……ん?
そういや、返事がねぇな。

「…お前聞いてんのか」

じろりと睨むと、首を縦に何度も振った。
…俺が、邪魔をしたという事か。

俺はこの場を去ろうと立ち上がる。
他人の縄張りに興味はねぇや。

「あのっ…!」

焦ったような声を上げる。
おぉ、声だしやがった。

「ええと…」

目を泳がせて、何かを言おうとしている。
言い淀むというよりも…
言う事を探しているように見えた。
何だコイツ…。

「あ、一緒にごはん!」

……ゴハン?

「…は?」

何だって?
いくら何でも、言葉足らずにも程がある。
一緒にゴハン食べよう?
ってコトだろ?
何を甘ったれた事を言ってやがる。
ママゴトになんか付き合ってられるか。

…でもコイツの、
必死に何かを伝えようとする目が、
俺の心に訴えてきて、正直、邪険にできなかった。

「…1人で食えば?」

邪険にはできないものの、
それでも俺にはその気はない。
その場を去ろうと、塀を飛び越える準備をする。
ぐっと体に力を溜め、跳び上がった、と、
思ったのに、
走ってきたそいつに腕をつかまれ、
バランスを崩した俺はその場にすっ転ぶ。
なぜかその娘も倒れ込んだ。

「…ってめぇ何しやがる!」

何なんだよこいつ!
この俺様を転ばすとはいい度胸だ。
くっそ腹立つ!
怒りをぶつけると
瞬間的に両腕で頭を守り、

「ごめんなさい!」

と謝罪してくる。
…殴ったりしねぇや。
はぁ、もう…。

「…なんなんだよおめぇは」

何の用があんだよ。邪魔くせぇな。
そろそろと窺うように俺を見上げるその目は
少し安心したように見えた。

「一緒にごはん食べよう?」

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