第29章 ゆめのはじまり
★彡
いつまでも一緒にいられると思い始めたのは
いつの頃だったかな。
独りぼっちだった私に、
好きだと言ってくれる人が出来て、
私も好きになって、
そんな事が起きるとは思ってもいなかったのに
それは紛れもなく現実で
嘘偽りなく、ずっとそばにいてくれた。
こんな事は当たり前じゃないと思っていたはずなのに
いつしかそんな考えは忘れてしまって
恐ろしい事に、とうとう私の日常になってしまった。
だから、
「今日は帰れそうにない」
そう言われた時は、
なんだかとっても悲しくて
すぐに返事をすることができなかった。
彼がふとこちらを見たので
ハッとして
「わかりました」
と笑ったけれど
そんなのもう手遅れで…
きっと勘づかれてしまったんだ。
だからと言って
彼が今夜帰らないことに変わりはないし
何も言えなくなった彼は
「ごめんな」
とツラそうな声で言うばかり。
「何ともありませんよ。お夕飯はどうされますか?」
「食ってく。お前のメシは元気出るからな」
慰めるような言い方をされ、
私は笑うフリをするしかなかった。
「…そんな顔、しないでくれ。
なぁ、今夜の分…お前の事も喰っていいか?」
「えぇ…?」
訊き返しながら見上げたら
もう既にその気になっていた天元がそこにいて
情熱的な口づけをされる。
朝目が覚めて、
まだ起き上がっただけの私たち。
足は布団の中だし、
頭がはっきり目覚めたのは
今の話をしたおかげ。
身体はまだ、眠ってるのに…
それでも淋しさからか
彼の口づけを追ってしまう。
だめだとわかっていながら
この人に溺れていたいと思ってしまう。
だって離れたくない…
そんな気持ちは彼に筒抜けになるだろう。
そうなったら、きっと傷つけてしまうのに…
一緒にいてやれなくてごめん
彼ならそう、思うに違いない。
でもこの流れに身を任せて
慰めてもらうのも悪くない。
「…ん、ぁ」
熱い舌で唇をなぞられて
ぴくりと反応してしまう私を
愛しそうに抱き寄せた。
膝の上に引き上げられて
天元が夜着の帯に手をかける。
口づけというよりも、
口の中をあますことなく舐めるようにされて…
ぴちゃ、と音がするたびに感じてしまい
足をきゅっと縮こませて行く私。
あ、れ…
ほんとに、食べられちゃうのかな…