第27章 愛のカタチ
「ねぇ……もう、出る時間…」
私はくるりと首を回して
ムダにオシャレな時計を確認した。
それに倣って
同じくチラリと時計を見た天元が、
「まだ平気」
ポイっとひと言。
「楽しみにしてたのに…っ」
「まだ全然間に合うって」
「全部まわりたいの」
「小せぇとこだから大丈夫だよ」
絶対天元はわかってない!
心躍る、私のこの想いを。
私の勤めるお弁当屋さんは
カレンダーの青い日と赤い日に合わせて休む。
その日は、お客さんが極端に減るんだそうだ。
でもそのおかげで、
私は愛しい彼とお休みを揃えられる。
何ともありがたい。
そして、
この間の水曜のこと。
その愛しい彼から素敵なご提案。
「水族館に連れてってやろう」
……。
提案の内容は最高に素敵だった。
ただその、上からな言い方のせいで、
「…別にいい」
ついお断りをしてしまったほど。
だって、『やろう』って。
『行こう』とか…せめて『あげる』とか。
『連れてってやろう』なんて言われると、
すごく一方的な気がして行く気にならない。
俺は別に行きたくないけど
お前が行きたいなら行ってやるぜ、的な。
そんなふうに聴こえてしまう私の方が
可愛くないだけだろうか…。
ソファの下に敷いてある
ラグマットにうつ伏せで寝そべっていた私は
再びスマホに向き直った。
「おい!お前行きたがってただろ」
しれっとしている私を
慌てて覗き込む天元は
私の手からスマホを取り上げた。
「あッ!何するの返してよ!」
それを追ってガバっと起き上がった私に
「俺との話が先だ」
ムッとして、
そのスマホを
自分の背中とソファの間に隠してしまう。
前にも何度か、こんな事があった。
こうなったら話がつくまで
何があってもスマホは返ってこない。
「行きたくねぇのかよ」
両膝に肘をつき、
上体を乗り出して天元は私を睨んだ。
「行きたくないわけないじゃん。
水族館でも動物園でも、
天元とならどこでも行きたいに決まってる」
「じゃ何で『別にいい』なんて答えが返ってくる」
うわめっちゃ不機嫌…
「…言い方変えて。もっと優しく誘って」
「……水族館、一緒に…行こうか?」
悩みながら、
言葉を慎重に選びながらのひと言。