第26章 ふたつの半月
自分の気持ちがどこにあるのかわからないくせに
…宇髄さんの気持ちに応えられないくせに、
そばにいてもらおうなんて、
そんな都合のいい事が許されるわけがない…
苦しいよ…
「…たす、け…」
「睦、大丈夫だ…
どんなお前でも、そばにいるからな」
「それじゃ、…だめ、」
それじゃ同じことの繰り返し。
私はまた、罪の意識に苛まれるんだ…
「大丈夫だよ、お前はすぐに、
俺のこと好きになるから」
「……すき、に…」
なんて自信過剰な台詞だろう。
でもこの人が言うと
そんな気がしてくるから不思議…
まるで魔法の言葉…。
「睦が俺を愛せば
その罪悪感はなくなるんだろ?そんなの、すぐに
俺なしでいられなくなるから心配いらねぇよ」
そう言って、私の目尻に口づけをくれた。
相変わらず、私の気持ちなんか見透かされている。
もう、…敵わないのかな、宇髄さんには。
だってね、あの苦しいのが無くなっている。
すぐに助けてくれた。
好きって…、愛って、そういう事なの?
それとも、宇髄さんだから?
でも…私からも
歩み寄ってみようかなぁ…?
だって私は、今日捨てるんだ。
果てなく、愛しかった日々を。
自分のものにできなかった、長く愛しい日々を。
愛されない事に慣れ過ぎてしまった私の心が
この人に向かってく。
愛されたくて、
愛したくて。
真っ直ぐに向き合いたい。
胸を張って言いたい。
いつかそうなりたくて…。
腕を伸ばして、宇髄さんの首にしがみついてみる。
自ら1歩を踏み出した私を
愛しそうに見下ろしながら、
よくできましたとほっぺたに唇を押し当てた。
私はくすぐったくて
でも全然嫌じゃなくて…
もっと身を委ねてしまう。
私の、満たされなかった半分しかない心が、
向け続けてくれた宇髄さんの半分で満たされる。
そうして、ひとつのまんまるな気持ちになるんだ。
ちょうど今日の、月のように。
☆彡