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風雷暴見聞録

第92章 89.


ヒーロー検定試験に来た時以来の旅館。
お昼を食べて移動して…丁度チェックインが出来る時間帯だったのでそのまま部屋を取る。ゆっくりしたいって言っていたし、そのまま部屋へと上がる事にした。

荷物を置いて、中庭を見る。
うんうん、久しぶりだなぁ。砂利や苔、低木。チョロチョロと流れる小川。癒されるなぁ…。

前回と同じ部屋ではないけれど、2人で泊まったあの時よりも部屋は少し広い。

窓辺の椅子に膝を乗せ、背もたれに掴まる。そんな体勢で中庭を見ていて、以前来た時は部屋入ってすぐでぼーっとしてたっけか、と思い出した。
備え付けのクローゼットを開け閉めしている音に振り返ると、早速浴衣に着替え始めているゾンビマンが居た。めかして来いと言った本人は相変わらずコートにベルトの着いた黒いタンクトップ、私はめかす服なんて無くていつもの服。
私も着替えておくか、と近付くと、「お前のな」と浴衣を投げられたのをキャッチした。帯が窓辺の方に飛んでいく…ノーコンめ。

お座敷に座布団を敷いて、座る。

『今日は勉強会とか無いし、やる事は無いね』

やる事もなく、まったりと出来る。
畳の香りがまた心地よい。前回より少し大きな部屋で、後ろに倒れてもぶつける事もなく。ゴロゴロと畳の上を浴衣で転がった。

「心おきなく誰にも邪魔されず多少騒いでも許され、そして時間に縛られる事もなくセックスがしこたま出来るな」
『……言い方が変態の極み。最低すぎる』

畳を撫でる私に近付くゾンビマンは私を跨ぐ。
ファミレスで上がったゾンビマンの良いイメージ株が暴落していく気がした。

「泥仕合だが覚悟しておけ。たっぷり可愛がってやるからな」
『泥仕合はやめてお手柔らかに…して欲しい、かな?』

気がした、じゃない大暴落だ。凄い勢いで。
普段はしょんぼりした何かが元気になったらしく今にでも食い散らかす勢いだ。
誰だ、のんびりお前と2人きりでいたいとか言った男は。目の前で私を跨いだ男はしゃがんでニヤニヤとこの状態を楽しんでいるようだった。
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