第3章 大阪スイッチ(※)
「さ、簓さっ…も、私、イっちゃうッ…」
「ええで?俺がギュッと抱き締めたるから、まいちゃんもココしっかり締めぇや…」
「あッ、やあッ、ンンッ…!!」
耳元でそう囁かれ、身体中がそばだった。
簓さんとこういう関係になって、半年ぐらいになるだろうか。
「今日も可愛かったでまいちゃん♪」
「そ、そりゃどうも…」
「その気怠い感じもむっちゃ可愛いなあ♪」
再び簓さんに勢いよく抱き締められ、簓さんの頬で頬っぺをスリスリされる。
私達は決して恋人同士ではない。
だけど簓さんは私を抱く時、優しく大切に、まるで恋人にしているみたいに私を抱く。
「簓さん、明日も仕事ですよね?そろそろ寝ないと…」
「あ〜せやなあ。ほな、一緒にお風呂入ろ♪」
そう言いながら頬にチュッと音を立ててキスされる。
「お、お風呂ではしませんからね?こ、声も響くし…」
「…それは、まいちゃんが声抑えれば問題ないやろ?」
普段あまり開かない簓さんの目が、真っ直ぐに私を捉える。
私はこの目に弱い。
そんな簓さんと出会ったきっかけは、私が飲みの帰りに一人で歩いている所に、簓さんが声を掛けてきたのだ。
『お嬢さんお嬢さん!こんな遅くに女の子一人で歩いてたら危ないで?』
確かに…
こうやって声を掛けられたりするかもしれないもんね。
っていうか関西弁?
『ああ、ちょっとシカトせんとって!』
ていうかこの声、どっかで聞いた事あるような…
『ほら、怪しいモンちゃうから!』
そう言って深く被っていた帽子をとりながら、私の目の前でしていたマスクを下にずらす。
『ぬ、白膠木簓…?』
『正解や!ほな正解者には飴ちゃんあげましょか♪』
そう言うとポケットから取り出した飴を私の手に置く。
『実はタクシーのおっちゃんと話が盛り上がってもうてな?んで気付いたらよう分からんとこに来てて。んで話も一段落したから適当に降ろしてもろたら、こんな人気のない所について着いてもうたっちゅーワケや』
さすがお笑い芸人。
話がするする入ってくる。