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雪を梳かす熱き炎【鬼滅の刃】

第2章 闇に灯る赫き炎


ゴプン
深い
深い
水の中に落ちて行く。
いや…本当に私は落ちているの?
上も下も分からない闇の中

(私は…どうしてここに…?)
(…っか!)
(…誰かの声がする…誰の声…?)
(…りっか…!…六華!…六華!!)
(この声…どこかで…)
(六華…生きて、幸せになりなさい…)
(あなたは、誰…?)

*********
満月の夜、見渡すかぎりの静かな狐百合の花畑で六華は目を覚ました。

『私…何してたんだってけ?』

その問に応える者はいない…そう思っていたが

「なんだ?こんな夜更けに女が1人とはなぁ。しかもこの匂い、稀血じゃねぇか!俺はついてるぜ!!」
『稀血??あなたは、誰?』
「知る必要なんかねぇさ!!今からお前は俺に喰われるんだからな!!」
『!!』

見たことのない姿。異形のモノ。私は食べられてしまうの?何もわからないまま、こんな誰もいない場所で…
でも…

『私を食べることはあなたの利になるの?』
「あぁ?当たり前だろ?稀血を喰えば100人分の力なんだからな!」
『そう…』

ならば、この『人』に食べられる最後もいいのかもしれない…
六華の身体から力が抜けた。

「賢いやつだ。大人しくなるとはなぁ。ひとおもいに食ってやるよ!!」

六華が目の前にある死を受けいれ、異形のモノが飛びかかったその時。物凄い速さで何かが六華の横を通り過ぎた。

「炎の呼吸、壱の型…不知火!!」
「ぎゃああああ!!!」
『!?!?』

異形のモノが首を斬られ断末魔をあげた。

「罪なき人を喰らうことはこの俺が許さん!!」
「くそ!くそ!鬼狩りめ!!そいつは稀血なんだ!喰えば100人分の力が、俺も十二鬼月に…!!」

異形のモノが悔しそうに叫ぶ。

『…』

それまで成り行きをただ見つめていた六華が、崩れ去ろうとしている異形のモノに近づいていく。

「おい!それに近づいては…!」
『誰もあなたを責めたりしない』
「は?」
『認めて欲しい。生きたい。それは誰しもが思うこと。あなたは、ただ生きたかっただけ。そうでしょ?』
「俺は…」
『生きたいという思いは悪いことじゃない。あなたの生きたいという気持ちは誰かが責めていいものじゃない』
「…」
「…」
『もう…何も苦しくない。大丈夫』

そう言って六華はふわりと笑った。異形のモノにはそれが初雪のような美しさと優しさに溢れたものに見えた。
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