第7章 それぞれの想いはーー
(‐絶対の後悔*忍足‐)
跡部の家を後にしてそんなに遠くない俺の家に着く直前、
『侑、…忍足、くん』
紗耶は歩いてた足をピタリ、と止めて俺を呼んだ。
『侑士でえぇよ。どないした?』
『…芹佳は』
『おん、大丈夫みたいやで』
『だったらあたし、自分の事くらいどうにかするから放っといてくれていい』
口調は強気なのに、その声は震えていて、
俺は苦笑を浮かべると彼女の顔を覗き込む。
すると案の定、その頬にはボロボロと涙が伝っていた。
『紗耶は何も気にする事ないんや。住む所がないならずっと俺の所に居ればえぇ』
『…侑士はあたしの事覚えてるの?』
『んや、覚えとらん』
『だったら、あなたがあたしに関わる理由がないでしょ。ーー同情なら要らない』
“同情”そう言われた時、ズキリと胸が痛んだのは何でなのか。
けど、ココでこの子を見捨てたら、後に絶対後悔する、そう思った。
俺は、自分のベッドで寝息をたてる紗耶の髪を
サラリと退けて露わとなった涙に濡れた頬を撫でる。
結局、あの後何とか言い包めて彼女はここに住む事になった。
俺が紗耶の頭を撫でてたその時、ポケットの中でブルッ、と携帯が震えた。
《…あ、侑士?》
『お、芹佳か?』
《紗耶、どう?》
『大分落ち着いて、今は寝てるで』
《迷惑掛けてごめんね。紗耶の事、お願い》
『おう、任せとき。せや、芹佳』
《何?》
『…怒らんで聞いてな?』
《うん?》