第7章 それぞれの想いはーー
(‐涙の思い出*不二‐)
高津さんと吉井さんが跡部の屋敷を後にしても、
僕は、呆然とする事しかできなかった。
『…不二、大丈夫か?』
『うん。大丈夫だよ、手塚。…皆。僕、先に帰るね』
…あの子たちの事を知らないのは事実なのに…何でかな、
高津さんが流した涙に、胸の苦しみだけが、消えないんだよ。
『…皆。僕、先に帰るね』
『ーーあぁ、』
『車で送らせるぜ?』
『あははっ、女の子じゃないんだから』
跡部の言葉に、軽く笑って誰にもバレないように
必死に隠したけど、手塚にはバレてたみたいだ。
『ーー知らない子なのに、僕は…高津さんの涙を知ってるんだ』
帰り道、沈黙を破って僕がそう言えば、手塚は困惑した顔。
僕は“ごめん、忘れて”そう言って家の中に入った。
『…どうかしてるよ、僕は…』
『あら、周助。お帰り』
『ただいま、姉さん』
『そう言えば周助、昨日どこ行ってたの?』
『え、昨日?昨日はずっと部屋で勉強してたよ。テストも近いし』
『あら、でもお茶しようと思って部屋に行ったら居なかったでしょ?』
姉さんの言葉にちゃんと部屋に居たよ、そう返して自室に入った。
そうだよ、テストも近いし勉強しなきゃ。
そう思って昨日やってたはずの英語のノートを開くと
『…あ、れ…?何で…』
一日中やってたはずなのに真っ白なノートに僕は目を見開く。
僕がその現状に呆然としてたら、部屋をノックする音が聞こえて
姉さんが“洗濯しちゃう所だった”、と一枚の写真を僕に手渡した。