第6章 涙が零れる夢物語の世界
侑士の言葉が嬉しくて、頬を一つ、涙が伝った。
《ほな、おやすみ》
「ーーおやすみ、いい夢を」
侑士が電話を切った事を確認して、私も電源ボタンを一つ押した。
「ん。携帯ありがと、景吾」
『…あぁ。越前が迎えに来るんだろ?玄関まで送る』
「いいよ、一人で行ける」
『おっ、俺が送る!』
「いいって、一人で『頼むっ!送らせて…っ』
ブンちゃんの焦ったような声色に私は改めて彼に視線を送ると
彼は、とても情けない顔をしていて、断る事なんかできなかった。
「…じゃぁ、お願い」
『おっ、おう!』
辿り着いた、リョーマとの待ち合わせ場所。
「…何か話そうよ」
私がそう切り出しても、結局ブンちゃんは一言も話さなかった。
私は、あの後リョーマと一緒に彼の家へと戻って来た。
少しだけ遠回りして、ゆっくり帰ってくれたのは彼の配慮だ。
けれど、彼の家の前で私の足は止まってしまった。
『…芹佳サン?』
「わ、たし…本当にリョーマの家にお世話になっていいのかな」
『何、今更。了解は取ってあるって言ったでしょ』
「だって、さ…いつ、元の世界に帰るかも分からないし…もしかしたら、一生この世界に居る事になるかもしれないのに」
ただ、リョーマの部屋に飛んだって理由だけで、
こんな風に迷惑掛けちゃいけない気がして。
『いいんだよ、俺がアンタと居たいって思ったんだから』
「…え?」
『この際だからハッキリ言っとくね』
「言っとく、って何を…」
『芹佳サンが不二先輩を好きなのは分かってる。でも、俺は「ちょっ、待って!」
『何?』