第6章 涙が零れる夢物語の世界
(act.05‐ありがとう‐)
私は、言いたい事を言ってスッキリすると景吾に視線を送る。
「景吾」
『な、何だよ…』
「電話貸して」
『あん?』
「帰るから電話貸して」
私のその言葉に、景吾は携帯を貸してくれた。
受け取った携帯に、ポケットからリョーマの番号が書かれたメモを出すと
その番号を押して携帯を耳に当てる。
「あ、もしもしリョーマ?」
《芹佳サン?》
「うん、」
《その声、ダメだったの?》
「…うん、ダメだった」
《そっか、》
「あ、のさ…迷惑なのは分かってるんだけど、そっち、戻ってもいいかな?」
《言ったでしょ、アンタの居場所は家にある、って。今から迎えに行くからさっき降ろした場所に居て》
「…ありがとリョーマ、待ってる」
私は皆の視線を感じる中リョーマとの通話を終えた。
リョーマとの通話を終えて、
今度は景吾の携帯から侑士の番号を出し電話を掛けた。
「…あ、侑士?」
《お、芹佳か?》
「紗耶、どう?」
《大分落ち着いて、今は寝てるで》
「迷惑掛けてごめんね。紗耶の事、お願い」
《おう、任せとき。せや、芹佳》
「何?」
《…怒らんで聞いてな?》
「うん?」
《俺な、混乱しとるのは確かやし、内容が現実離れしてて全部が全部信じてへんねん。多分まだ疑ってるんや》
「仕方ないよ」
《ーーけどな、二人が嘘付いてない事も、紗耶の涙も本物やって分かっとるよ》
「…うん、ありがと…」