第6章 涙が零れる夢物語の世界
「私が、周助を…好き?」
『は?違うの?』
「だっ、て…、確かに好きだけど、ソレは恋じゃなくて…」
『…自分の事には鈍感なんだ、芹佳サンって』
リョーマの言葉の意味が分からなくて、私は困惑した。
『よく考えてみなよ。この世界にアンタの世界にトリップしてた人は不二先輩だけじゃなくて手塚部長だって、跡部さん忍足さん、丸井さんに切原さんだって居たわけでしょ?』
「…え、うん」
『それなのに、この世界に来てからアンタは誰の事考えてる?』
「そ、れは…」
『芹佳さんだって言ってたじゃん。“周助に会えば、何とかなる”って。つまりは、アンタはこの世界に来てから不二先輩の事しか考えてなかったんだよ』
ーーあぁ、そう言われて見ればそうだ。
知らないって言われて胸が痛んだのも、
つまりは、そう言う事。
一時、本気で好きなのかも、そう思った。
でも、憧れなんだ、と無理矢理気持ちを誤魔化してた。
ソレ自体が、間違ってたんだね。
「…そっか、私…世界とか関係なく周助が恋愛対象として好きなんだ」
『で、俺も芹佳サンが好き』
「うん、そっか!ありが……はぃ?」
『思い出してくれない不二先輩なんてやめて俺にしなよ』
リョーマがそう言った直後、再び携帯の着信音が鳴り響いた。
『…はい、もしもし。ーー不二先輩。え?…はぁ、分かりました。明日の昼は不二先輩の奢りですよね。…ッス』
時間にして1分くらい。
リョーマは電話の電源ボタンを押すと、私に
出掛けるよ、と一言だけ言葉を零した。
ありがとう
(キミの一言に凄く救われたの)