第6章 涙が零れる夢物語の世界
「…紗耶?」
私は私で、紗耶の姿を確認すると同時に涙が零れて止まらなくなった。
『やっぱりアンタもこの世界に来てたのね!』
「…紗耶、だ…」
『おい、二人とも騒いでないで取り敢えず中に入れ』
その声の主は、玄関で不機嫌そうに腕を組む景吾の声で、
私たちは一瞬顔を見合わせると手を繋いで彼の家へと足を踏み入れた。
…景吾の後について行くと、通された部屋には
周助、国光、侑士、ブンちゃん、赤也んと、あの漫画が揃っていた。
『ーー結論から言うぜ。俺たちは全員、お前ら二人を知らねぇ』
景吾の口から出たその言葉に、私たちを訝しげに見る全員の瞳に、
紗耶は唇を噛み締め、私も、必死に零れそうになる涙を堪える。
「…み、皆の中に、空白の数日が存在したりしない?」
『ねぇな。俺たちはずっと今まで通りの生活をしてた』
ーーあぁ、やっぱり、私たちの知ってる皆は、
この世界の彼らじゃないのかもしれない。
『大体、漫画の世界にトリップ、なんてそんな夢みたいな事起こるわけないッスよ』
近くに居るのに、目の前に透明の壁があるみたい。
昨日まで一緒に笑ってた皆に会いたい。
『…そうね。でも、私たち二人にはその夢みたいな事が起こってるわ』
『それって、アンタらの思い込みなんじゃね?』
『ブン…丸井くん、それどう言う、意味?』
『よくあんだろぃ。漫画の主人公になりたくてーみたいな。…そんなに俺たちの気を引きてぇのかよ』
『さすがにちょっと引くッスよ』
ブンちゃんと赤也んのその言葉に、紗耶は…キレたっぽい。