第6章 涙が零れる夢物語の世界
(act.04‐大好きだけど‐)
本当はずっと不安だった、怖かった。
紗耶も居なくて、周助は私を知らなくて。
ぐちゃぐちゃで、ワケも分からなくて。
ーー♪ー♪♪、
突然鳴り響いた携帯の着信音にリョーマは私を離すと
鳴り響く携帯を耳にあてた。
『もしもし。…不二先輩?え、はい、居ますけど…あ、はい。分かりました』
暫くして携帯の電源を落としたリョーマは私に向き直ると
“俺の服貸すから出掛ける準備して”そう一言、言葉を零した。
その後、リョーマから服を借りて彼のチャリで走ること数分。
「え、何?何処に向かって…」
『さっきの不二先輩からの電話で、紗耶さんかもしれない人を忍足さんが保護したって。で、向かってるのが跡部さんの家』
「いや、何で侑士が保護したのに向かってるのが景吾の家なの?」
『何か、向こうも芹佳さんと同じような事言ってるらしくて、芹佳さんも絶対こっちの世界に来てるはずだからって豪語してるんだって』
暫く走って、止まったのは…私の家とそう変わらない大きさの跡部宅前。
『芹佳サン、これ』
「何?」
『俺の携帯番号。何かあったらそこに電話して。アンタの居場所、ちゃんと家にあるから』
「え、リョーマは行かないの?」
『俺は、部外者だから。ーー不二先輩、思い出してくれるといいね』
そう言って、リョーマは来た道を戻って行った。
『ーー芹佳っ!!!』
その直後、正面の玄関から飛び出して来たのは会いたかった紗耶で。
彼女は私の姿を確認すると飛び付く勢いで私を抱き締めた。