第6章 涙が零れる夢物語の世界
「リョーマにあの漫画貸したのって英、…菊丸くんなの?」
あっぶな、勢いに任せて“英二”呼ばわりしちゃうところだったよ。
『おチビの事知ってんの?』
「知ってる知ってる」
『そ、俺が貸したの。3巻まで出てて、残り今持ってるけど読む?』
「読む!」
どうか、偶然の重なりだと信じさせて下さい。
私は英二に《DREAM or REAL》の2・3巻を借りると、
その場でパラパラとページを捲った。
そ し て 、 撃 沈 。
誰か本気で嘘だと言って。
私にドッキリだと言ってやって。
「…菊丸くん、このヒロインたちのプロフィールって、どっかに載ってる?」
『2巻の一番後ろに載ってるよん?』
その言葉に、一番後ろのページを開く。
そこにはーーー、
「ーーーう、そ…」
『大丈夫?顔色悪いよ?』
「…しゅ、すけ…」
私と、紗耶のプロフィールがそのまんま、記載されていた。
つまり、ココの世界では、私と紗耶の世界は漫画になってて?
私と紗耶は、漫画の登場人物で?
…ダメだ、頭が今の事態について行かない。
『それで、君は僕の事知ってるみたいだけど、どこかで会った事ある?』
ーどこかで会った事ある?ー
彼のその言葉は、私を突き落とすには十分で、
「…あー、ごめん。私が一方的に、知ってるだけ…」
『あっ、ちょっ…!』
私は視界が涙で埋まって行くのを見られたくなくて
その場を後にして、屋上へと走った。