第5章 これが私たちの世界です
(act.05‐身分相応の‐)
「…紗耶が居たから今の私があるの」
ーー彼女を悪く言うのだけは許さないわ。
『昔から言ってるだろう?高津財閥の人間に感情はいらない、と』
「何それっ、」
『特に今のお前の感情はこれから先、邪魔になるだ「お父様に何が分かるのっ!!」
私の事、何も知らないくせに、好きな物も、嫌いな物も何も
小さい頃から、ずっとずっと放ったらかしだったくせに
寂しいと泣いても、振り返りもしなかったくせに
どうして今更、やっと手に入れた幸せを奪おうとするの。
『ーー3日後のお前の誕生日には婚約パーティーを開くからそのつもりで居ろ』
「婚、約パーティー…?」
『そうだ』
「初耳なんだけど」
『早い内に知らせると駄々をこねるだろう?明日は早く帰ってこい』
「…そうやって、お父様は何でもかんでも勝手に決めるのね」
『何があろうともお前は、高津財閥の一人娘だ』
“高津財閥の一人娘”
その言葉一つで私の人生、その全てが決まる。
小さい頃から分かってた。
分かってたけど、こんなのまるでーー…
「ーーお父様にとって、私って何?」
黙り込むお父様に、私の中で何かが爆発した。
「…わっ、たしが今までどんな気持ちだったかお父様知ってる!?どんっ、なに…っ、寂しかったか…どんなに、あなたに振り向いて欲しかったか…っ!」
『芹佳、「ーー私はお父様の人形じゃない…っ!!」
私は、そんな言葉を吐き出して家を飛び出した。
誰にも私の気持ちなんか分かりっこない。
大体、3日後に婚約パーティーって何よ。
おかしいじゃない、どうして、当事者の私が、
そんな土壇場で知らされなきゃならないの。
「っ、…!」
ーー結局、私は父にとって“駒”でしかなかったのだ。