第5章 これが私たちの世界です
差し出された手に自分の手を乗せると
『芹佳』
「何?周助」
周助のそんな声が聞こえて視線を向けた。
彼はとても輝かしい笑顔を浮かべて居て、
『失敗したらごめんね?』
私は苦笑を零して彼の手を握る自分の手に力を込めた。
「練習であんだけ完璧にこなしといて今更何を言うか」
『いや、失敗した時に芹佳がうろたえないように一応ね』
きっと私が緊張してる事に気付いてたんだ。
でも、周助は優しいから、ソレを悟らせない。
「…私も失敗したらごめんね?」
『大丈夫、何とでもしてみせるよ』
「ふふっ、頼もしいパートナーだね」
『ーー行くぜ、Show timeだ』
私たちは景吾の言葉に頷くと、ゆっくり歩き出した。
大丈夫。だって、隣には彼が居るんだもの。
『紗耶、さっきも言ったとおり、お前はパートナーの俺だけを見てればいい』
『わかったわ、』
『失敗しても気にするな、俺がちゃんとフォローする。分かったな?』
『ーーえぇ』
紗耶にも頼りになるパートナーが居る。
私たちの足は、ホールの中心へと向けられた。
鳴り響く音楽に軽やかなステップ、
ふわりと舞う、私と紗耶のドレス。
ぎこちない、紗耶のステップに苦笑を浮かべて
緊張感の中に浮かぶ、高揚感。
『何か、ダンスパーティーなんてお伽話の世界みたいだ』
笑顔でそう言う周助に、私も笑顔になった。
そうだね、周助とダンスが出来るなんて本当にお伽話の世界みたいね。
きっと、これは今日だけの一時の夢物語ーー。
それから、二曲目の音楽が掛かってターンしながらのパートナーチェンジ。
『よぉ、芹佳』
「宜しく、景吾。紗耶とのダンスはどうだった?」
『2回ほど踏まれたな』
ステップを踏みつつ私をクルリとターンさせながら
苦笑を浮かべる景吾に、私も笑みを零した。