第5章 これが私たちの世界です
『…嬉しそうね、芹佳』
「嬉しいよ?だって、最後のダンパに紗耶と出られるんだもん」
『ーーっ!!』
「おわっ、」
突然の正面からの衝撃に私の視界は一瞬にして揺らいだ。
ドレスのままじゃ受け身なんて取れませんて。
『『『『芹佳(さん)!!』』』』
しかし、周りに居た景吾と周助以外の王子によって(二人は既に移動済み)
私たちは二人して倒れ込む、と言う危機を回避したのだった。
「…いや、あのね、紗耶サン。抱き付かれるのは嬉しいし大歓迎なんだけ『愛してるわ、芹佳』
「私も愛してる」
ぎゅうっ、と抱き付かれた腕に力がこもると、
私もそれに習うように紗耶を抱き締めた。
『あ、レズっとる』
紗耶に愛を伝えられる、なんて
そうそうない事なんだから何とでも言うがいいさ。
『紗耶、芹佳。レズってねぇで早く来やがれ』
前方で、私たちを呼ぶ声が聞こえて、慌てて前の方へと足を走らせると、拍手喝采。
…人気者だからね、私、いやすみません、半分本気ですけど半分はウソです。
『代表者の中で降りたい方はいらっしゃる?』
「ーーいいえ、皆様喜んで参加なさるそうです」
『そう、良かったわ。…高津さんは前例ナシの3年連続だけど、保護者の方・在校生の方からの希望で決まってしまったの』
「光栄ですわ」
先生のその言葉に私は、にこりと笑みを浮かべた。
すると、周りからは“きゃーっ”だの“うおーっ”だの、
嬉しい歓声が聞こえて、私はそれに苦笑してしまった。
『…モテモテね、芹佳』
「安心なさって、紗耶もモテモテですわ」
『嬉しくない』
「何故ですの?」
『これから生き恥を晒すことになるか「あら、生き恥なんて晒させませんわ」
『は?』
眉間にシワを寄せて“何言ってんのアンタ”みたいな顔をする紗耶に
私は彼女の耳元に唇を寄せると、小さな声で囁いた。