第5章 これが私たちの世界です
(act.03‐苦労の本番‐)
うわー、ある意味の三冠達成?
名誉な事なんだけど、何て言うか…もう私はいいんじゃないかな。
『…芹佳、あたしちょっと耳が悪くなったみたいなの。確認していいかしら?』
…紗耶はどうしても拒否したいらしい。
「…聞き間違え、とかじゃないよ?」
『どうして!?おかしいわ!おかしいじゃないっ!!』
そうだね、おかしいね、誰も見た事がない紗耶のダンスの腕前。
なのに、何で紗耶が選ばれたのか。
『紗耶、落ち着きぃや』
『これが落ち着けると思って!?』
《名前を呼ばれた方は前の方にお集まりください》
「ほら紗耶、取り敢えず行こうよ」
『死んでも行かない、断固拒否を貫くわ。内申がなんぼのモンよ、生き恥を晒すくらいなら内申なんていらない』
『内申って何の話だ?』
「国光。あのね、この代表者に選ばれると、内申点がすこぶる良くなるの。これからの進学にも就職にも有利になるのよ」
『…断れるものなんスか?』
「うん、出たくないって言えば他の子に変われる」
『…まぁ、出たくないのを無理矢理、って言うのもな』
『絶対に嫌よ、あたし』
「まぁ、本気で出たくないみたいだし…ねぇ、紗耶?」
『…な、何よ芹佳。アンタが何て言おうとあたしは…』
「ーーーーーー?」
私はにこりと笑って、紗耶に耳打ちをすると、
彼女は少し考えた結果、口を一文字に結び、
『…ーー出るわ』
その後に“不本意だけど”、と言葉を付け足した。
『…芹佳、お前何を言ったんだ?あんな頑なに拒否していたのに』
「んっふふー、秘密。さ、行こ!」
紗耶に手を差し出せば、彼女は大きな溜め息を吐いた。
ーー景吾と他の子が踊ってもいいの?って言ったらイチコロだった、景吾すごい。