第5章 これが私たちの世界です
だって、有り得ないでしょ!
何だって、本番20分前になった今、私のパートナーが
原 因 不 明 の 腹 痛 に 見 舞 わ れ る の っ !!
先生だって大パニックよ。
『ーー…今からじゃ相手なんて見つかりっこないわ…っ!』
「先生、落ち着いて下さい」
って言うか、先生がパニックだったから平静を装ってみたけど
今一番パニックになりたいのは私の方だ。
今からたった20分でこれ用のステップとか覚えてなんて
そんな神技、一体誰に出来るって言うの!!
大体そんな人が居たら私が見てみた…ーー居たわ、たった一人。
「ーー先生、出来そうな方を盟星学園に一人知ってますわ…」
『本当!?放送で呼び出すわ、名前は!?』
「いいえ、彼は私が直々に呼び出し致します。どうぞ先生は他の方のサポートに」
『じゃぁ、これが放送室の鍵よ。頼んだわ、高津さん』
「ーーお任せを」
私は、先生に向かって極上の笑みを浮かべた。
お願い景吾っ、もう、あなただけが頼みの綱よ…!
お披露目の準備とやらで芹佳と別れた30分後、
跡部たちは、全員揃って会場になってるホールにいた。
『ーーで、紗耶は何でそんなにダンパに出たくねぇんだよ』
『何でもくそもないわよ。出たくないモン出たくないのよ』
『紗耶さん…実は踊れない、とか?』
『ななななななに言ってんのかしら、プリティー赤也』
“分かりやす過ぎる”、とその場に居た誰もが思っただろう。
『何だ、踊れねぇのかよ』
『…そうよ、踊れないわよ。踊れなくて何が悪いの』
『開き直んのかよ。運動神経良さそうなのにな』
『運動神経はいいのよ、ただ…リズム感がないの』
『つまり、残念なんだな』
『余計なお世話《盟星学園・3年、跡部景吾様。至急広間へおいで下さい》
ーー少し高めの綺麗な声が学校中を響き渡った。
人生最大の危機
(お願い…っ!誰か本気で助けて…っ!!)