第1章 この出会いに感謝をしたい
(act.02‐彼女と私とテニプリと‐)
掴んだ腕を自分の方に引き寄せ、何かを握らせた。
「…なっ、何『お釣り』
「…え?」
『お金、多かったから』
「あ、わざわざありがとう…」
『ねぇ。余計な事だと思うけどさぁ…言いたい事溜め込んでたらいつかアンタ、壊れちゃうわよ?』
“壊れてしまえたら、どんなに楽だろう?”
本当に瞬間的にそう思ってしまった。
『ーー高津財閥のお嬢様にどんなチッポケな悩みがあるのか知らないけ「あなたに何が分かるって言うのっ!!」
お父様に教わった、高津財閥の人間はどんな時も冷静に
感情なんか表に出してはイケナイって。
でも、ソレが、確実に私を苦しめ押し潰していた。
『分かんないわよ』
「私は高津財閥なんて肩書きは要らないっ!!お嬢様なんてなりたかったわけじゃないっ!!」
『うん、それで?』
感情的になんか、なっちゃいけないのに
分かってるのに、吉井さんのこの作り笑顔じゃない
本物の優しい笑顔が私の心に絡まった鎖を粉々にしていくーー。
「…“高津財閥”なんて言葉で一括りにしないで…ーー“私”って人間をちゃんと見て…っ、」
『…よーしよし、ちゃんと言えるじゃない』
頭を撫でてくれる、その温かい手が私の涙腺を決壊させた。
「…あー、こんなに大泣きしたの初めてかも…」
『はい、おめでとー』
「…おめでとうって何」
『え?大泣き初体験なんでしょ?』
「…そうだけど、おめでとうっておかしくね?」
『あら、高津のお嬢様は口が悪いのね?』
「口が悪くてスミマセンね。これが私の地なんですー」
『別に謝る必要ないわよ。あたしはアンタが地を出してくれて嬉しいし?』
「…吉井さんって、よく変って言われない?」
『言われないわよ、失礼ね。ソレに、吉井さんじゃなくて紗耶でいいわ「何で」