第9章 after story
『…ごめん、芹佳…あたしが芹佳と関わらなければ、芹佳はテニプリを知らなくてすんだのに…きっと、こんな想いもしなくてすんだ…』
「謝らないでよ紗耶。私、紗耶に会えて良かったし、彼らに出会った事も後悔してない。とても、楽しかったもん」
『あっ、あたしだって、芹佳と…皆と過ごせて楽しかったわ…っ!』
「だから、ーー私から紗耶にお願い」
『な、に?』
「これから色んな出会いがある紗耶は、絶対に心から“この人だ”って決めた人と幸せになってね」
『…芹佳は、今…幸せ?』
「ーーえぇ、幸せよ。私にとって“大好きな彼”はいつまでも周助が一番だけど、彼の事も大切だと思ってる」
ねぇ私、今ちゃんと笑えてるよね。
だって、今日、この時の為に“不自然じゃない”笑顔を練習したの。
偽りの笑顔が本物の笑顔に見えるように。
『ーー嘘吐き』
「…紗耶?」
『嘘吐き嘘吐き嘘吐き!』
「なっ、何よ!」
『本当は結婚なんてしたくないくせにっ!!』
「なっ、何を根拠に…っ!」
『そうやって笑顔見せてれば気付かれないとでも思った!?馬鹿にしないでよ!!』
紗耶の怒った表情に、私は戸惑う事しかできなくて
それでも、それがバレないように冷静を装った。
「わ、たしは…、」
『…バレたくないなら、自分の癖に気付きなさいよ』
「…クセ?」
紗耶の言葉に意味が分からなくて聞き返せば、
彼女は私の堅く握られた手を取って、ソレを優しく撫でた。
『アンタ嘘吐く時、見てるこっちが痛くなるくらい…手を強く握るのよ』
ソレは、私がいつも無意識のうちにやってる事で、
まさか、それが嘘を吐く時にやってる癖だなんて気付きもしなかった。
「…ーーははっ、紗耶にはトコトン嘘、見抜かれちゃうね…本当はね、結婚なんて、したくないよ…」
だって、私が愛したのは生涯でただ一人、彼だけだ。
大好きなのはただ一人
(本当に、本気で…大好きだった)