第9章 after story
(act.01‐大好きなのはただ一人‐)
あれから2年が経って、18歳になった今日、
私は2年間婚約者として付き合った彼と結婚をする。
『芹佳、本当にいいのか?』
「今更何よ、お父様」
『2年前のあの日から、ずっと引っ掛かっていたんだ。お前、本当は彼の他に好きな奴が居たんじゃないか?』
「…居たら、彼と婚約なんかしないってば」
きっとね、初めて本気で好きになったあの人を
忘れる事は一生掛かってもできないと思う。
でも、それだけはどうにもできないから
この先、隠し通すと誓うから、…だから、
ーー ど う か 、 許 し て 下 さ い 。
『芹佳、紗耶ちゃんが来てくれたわよ』
「わーい、紗耶だー!」
『私たちは先に挨拶して来るよ。二人で話でもしてなさい』
新婦の部屋を出て行く両親の背中を
私と紗耶の二人で見送った。
「あれから家族の仲はどう?」
『…お世辞にも円満、とは言えないけど、それでも2年前に比べたら幸せよ』
「智広くんも笑ってる?」
『そうね、笑ってるわ。ねぇ、芹佳?』
「ん?」
『…こういう時に言うのって、“おめでとう”でいいのかしら』
「あはは、ーーありがとう紗耶」
『芹佳、本当に後悔しない?』
「しないよ、」
『でもっ、芹佳は今でも周助のこ「あの3ヶ月は私たちが二人で見てきた夢だったのよ」
『…あたしは割り切れないわ。だって、今でもまだ…こんなに景吾が好きなんだもの』
「ーーうん、私も周助が大好きだった」
『例え彼らが漫画の中の登場人物でしかなくても、あの声もあの温もりも本物だった』
「そうね、…でも、この結婚は私が高津財閥の一人娘として、しなければいけない事なのよ」
私が苦笑を浮かべてそう言うと、紗耶が瞳に涙を浮かべて
私に抱き付くから、ーーーだから、私も
真っ白なウェディングドレスに身を包んだ姿で抱き締めた。