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DREAM or REAL【テニスの王子様】

第8章 見た夢はあまりに儚くて



皆が見てるのも忘れて、私は

涙を流す周助の首に腕を回して抱き付くと、

彼も私を抱き締めてくれて、

最初で最期になるだろうキスを交わした。



「…周助は、笑ってた方がカッコイイよ」



初めは大好きなキャラだった。

でも、出会って、それが憧れじゃない、恋に変わって、

いつの間にか、本気でどうしようもないほどに惹かれてた。

夢はいつか覚める、そんなの分かり切ってた事

けど、その夢が覚めなければいいって、本気で思った。

ーー本当に、本当にね…



「…私も、周助が大好きだったよ…」



私たちは自分の手で、後悔しないように

それぞれパソコンに“Yes”の文字を打ち込んだーー。

目を開けると、そこは見覚えのある私名義のマンションで、

ココに戻ってくるまで、時間にしてたった数秒。

もう、全部夢だったのかも、と思ってしまう程呆気なくて。



「何か、…呆気なかったね」

『…うん、』

「目を閉じて開けたら元の世界、だって…」

『全部、夢だったのかしら…』



このマンションに確かに居た彼らのものは何一つなくて、

彼らが来る前の物しか残っていない。

それでも、何でもいいから夢じゃなかった、と言う証が欲しくて

私と紗耶は自分のポケットに手を入れてあの写真を探す。

けれど、ポケットから出てきたのは、写真なんかじゃなかった。



「…紗耶、夢なんかじゃなかったよ…」

『…そう、みたいね、…』



私と紗耶、それぞれのポケットから出てきたのは、

愛しい彼らのリストバンドの片割れ。

夢のようで夢じゃなかったこの数ヶ月は、

私たちと彼らを中心に確かに存在していたのだ。

真っ暗な部屋で二人、ひとしきり泣いた後、顔を見合せて笑った。



後悔しないように
(なんて、後悔だらけだ)


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