第8章 見た夢はあまりに儚くて
「いいから、取り敢えず離れて落ち着きなさい!言葉が混ざって聞き取れないから!」
それでもなかなか離れようとしない二人を
見兼ねた国光と侑士が引き離してくれた。
引き離された二人は、目が真っ赤でまるでずっと泣いてたみたいだ。
「…ありがと、二人とも」
『気にせんといて。とにかく二人とも早よ上がりや』
笑みを浮かべてそう言ってくれた侑士とは裏腹に
国光は、控え目な笑みを浮かべるだけ(いや、それでも貴重なんだけど)。
侑士に促されて部屋の奥に入るとそこには、
ーー抱き合ってる最中の紗耶と景吾が居て…。
「…えぇーと、お邪魔しました」
『あの二人の事は気にせんでえぇわ』
部屋を出て行こうとした私を引き止めたのは侑士だった。
「…ね、侑士。あの二人、上手く行ったの?」
『まぁ、見ての通りなんやけど、ちょっと複雑やねん』
「複雑って…?」
『…それより、不二と芹佳に見て貰いたいもんがあるんや』
そう言って侑士は、私と周助を別の部屋へと案内した。
━━━━━━━━━━
吉井 紗耶様・高津 芹佳様
この度は、手違いによりあなた方をこの世界に連れて来てしまった事を深くお詫び申し上げます。
元の世界に戻る道は整っていますが、こちらの手違いなのであなた方の意思を尊重致します。
尚、こちらのシステム異常に伴いキャラクターは一緒には戻れません。
[吉井 紗耶]様
元の世界に戻る?(Yes or No)
[ ]
[高津 芹佳]様
元の世界に戻る?(Yes or No)
[ ]
上記の必要事項をご記入の上返信お待ちしています。
━━━━━━━━━━
侑士のパソコンであろうその機械に映し出されるのは、
何となく見覚えのある、ーーそんな文面。
思い出してくれたのに
(恐れていたのは…離れなければいけない、この瞬間で)