第8章 見た夢はあまりに儚くて
『芹佳、』
「ーーしゅ、すけ…会い、たかったよ…」
『僕も、だよ』
周助はそう言った途端、ギュッと少しだけ私を強く抱き締めた。
だから、私もそれにならうように周助に抱き付く。
少しだけ震えてたのは、私かそれとも、ーー周助か。
分からないけど、今はこの幸せな温もりに全てを預けよう。
『不二先輩、芹佳サン、完っ全に俺の存在忘れてるっしょ』
周助に抱き付いてた私は、リョーマの声に慌てて彼から離れる。
けど、私を抱き締める周助の腕が、それを許してくれなかった。
『やだな、越前。忘れるわけないじゃないか』
「ーーぉわっ!」
必死に離れようとする私の身体は、呆気なく
本当にアッサリと周助に捕らわれてしまった。
『ーーキミが血迷わないように…僕の物に手を出さないように見せつけてるんだよ』
『うっわ、悪趣味…じゃ、俺帰るッス』
リョーマはそう言うと、自転車の方向を変え、ソレに跨った。
『ーーー越前、ありがとう』
『…明日のお昼、楽しみにしてるッス』
「リョーマ!私もありがとう!!」
片手を軽く上げて小さくなるその後ろ姿を私たちはずっと見つめていた。
それから暫くして、私たちは手を繋いで侑士の部屋へと向かった。
インターフォンを押すと、中からドタバタと走ってくる複数の足音。
そして、勢いよくドアが開いて、二人に勢いよく抱き付かれた。
『『芹佳(さん)!!』』
「なっ、なななっ、何!?」
『酷い事言ってすみません!』
『酷い事言ってごめん!』
『俺守るって言ったのに!』
『泣かせるつもりなんてなかったのに!』
……声と身長からするに相手はブン太と赤也。
取り敢えず、言葉が混ざって聞きとれん!
「取り敢えず落ち着いて」
『でもっ!』
『だってっ!』