第15章 美しいのは
…美しいだなんて、そんな事…
美玖が恥ずかしさに俯きながら答えると、杏寿郎は心底不思議そうな顔をして口を開いた。
困ったな、知らなかったのか?
では、俺が教えてあげよう!
君の美しいところを。
そう言うと、杏寿郎が髪の毛に再度口付けし、
この艶やかな黒髪、それから、
柔らかな頬、黒曜石のような瞳。
美玖の美しいと思う箇所を上げながら、杏寿郎は順に口付けを落としていく。
そして、愛らしい唇。
最後にそう言うと、
美玖と杏寿郎の距離がなくなり、
唇が重なっていた。
…っ…!
恥ずかしさと嬉しさとで
美玖は瞳から涙が溢れそうだった。
杏寿郎はそれを見て、
ふっ…あと、俺も今知ったが、
君は涙すらも美しいな。
そう言うと、つぅっと流れた涙を
舌で舐めとった。
そのまま、耳まで愛らしいな…と漏らすと、杏寿郎の舌は美玖の耳を這った。
っ…んっ…はぁっ…あっ…
杏寿郎さん…っ
…くすぐったい…です。
本当はくすぐったかった訳ではないが、本当の事など言える訳もなく、美玖はそう言って杏寿郎を止めようとした。
そんな美玖に杏寿郎は、
瞳を輝かせ、不敵な笑みを浮かべる。
くすぐったい?
…本当に、それだけか?
それにしても、
今の声も良かったな…
もっと、聴きたくなる。