第4章 月明かり 杏寿郎side
ー…リンリンリンリン
虫の声が鳴り響き
人気のない街のはずれを歩く
担当区域で、
娘が消えていると司令がでた。
恐らくは鬼の仕業だろう。
歩き進めていくと、
だんだんと嫌な気配が感じられてくる。
角を曲がったところで、
足音が聞こえた…。
じっと闇の先を見据える。
…?
見ると、
若い娘が小走りに向かってくるのが見えた。
急いでいるのか、
何かに気を取られているのか、
こちらに気付く様子はない。
ー…そして、
先程からしていた嫌な気配が
一層濃く感じられる。
…居るな。
後ろに意識を集中する。
その時、
すぐ近くまで来ていた娘とぶつかってしまった。
も、申し訳ありません!
少し、急いでおりまして…
甘い香りとともに、
鳥がさえずるような心地よい声がした。
顔を向けると、
整った顔立ちが目に入る。
(……美しい。)
まだ少女のようだが、
大人びた印象を与える容姿をしていた。
(少し、母上に似ている…。)
幼い頃にこの世を去った、
母上の顔を思い出させる。
凛とした、強き人だった。
いや、気にする事はない。
お嬢さん、、
少し、目を瞑っていてくれ。
娘にそう告げ、
すぐさま鬼に斬りかかる。
鬼は、この娘を追っていたのだな。
許せぬ。
炎の呼吸 壱の型 不知火
鬼の首が地面に落ち、消えていく。
剣を鞘に納め、娘を振り返る。
恐怖に顔を歪めた娘が目に入った。
…怖がらせてしまったようだ。
驚かせてすまない!
今のは鬼だ!
この辺りで娘が消えていると聞いた。
恐らくは先程の鬼の仕業だ。
安心して帰るといい。
娘にそう声を掛けると、
意外なことに返事が返ってきた。
あの、、
攫われた子達は見つかったのですか?
…!
一拍置いて応える。
いや、娘達はもう食われてしまった。
あと数日、俺が早く来ていれば…。
柱として不甲斐なし!申し訳ない!
残酷な事実をそのまま告げ、頭を下げた。