第3章 幸せは苦しみへ
(最近、ジャーファル様の所へ行っていないな。そうだ、今日はあの方の好きな珈琲を持っていこう)
私はキッチンで珈琲を二人分淹れながら、ここ最近の仕事を振り返っていた。
仕込みよし。料理の出来よし。片付けよし。
最近はとても忙しく、夜も眠たくなっていたので、白羊塔へ行けていなかった。
ジャーファル様はきっと今日も、待ってくださっている。
そして、笑顔で私を出迎えてくださる。
彼のそんな行動を頭に思い浮かべるだけで、私の心は大きく高鳴る。
珈琲の準備も出来たし、そろそろ行こう――――――――
扉の方を向いたら、そこには・・・・・・・・・
「ねえミルカ。こんな時間に何処へ行くのかしら?」
同じキッチンで働く先輩のホシハ先輩と、ツミテ先輩がいた。
「あっれー、珈琲じゃん!美味しそうね、二人分持ってるけど、一体誰のかしら?」
「あ・・・・・・・・・えっと・・・・・・」
「ふーん、意外と吐かないのね。こっちはもう知ってるのにね」
自分の中の何かがざわめく。背中には冷や汗が流れて、”嫌な予感”を示した。
「知ってるのよ、あんたが白羊塔でジャーファル様と話してること」
いつか誰かに知られることはわかっていた。
知られて色々言われても、悪くは言われないと思っていた。
「出しゃばっちゃいけないわねー。あんたはあのお方には遠く及ばないってこと、いい加減自覚して欲しいわねっ!」
言われてすぐ、珈琲が床に飛び散った。ガシャーンと、グラスが割れる音がする。
「なんであんたみたいな奴があの御方に近づいてんのよっ!!」
肩を押されて床に倒される。起きようとする間もなく脚や腕を蹴られる。
「こーなっちゃえばいいのね。あんたの足なんてね!」
痛い。いたい。イタイ!!
「あらあ、手加減しないんだ、ツミテ。じゃあ・・・あたしも!」
助けて。たすけて。タスケテ!!