第10章 最終章 最後の歌
私は一度シンに報告するため、また帰ってきていないか聞くため、王宮へ戻ることにした。
「ミルカ・・・・・・無事だといいのですが」
王宮へ戻ると、付近を探す文官と内部を探す女官で分かれているようで、外でも中でも彼女を呼ぶ声が聞こえた。
「ジャーファル!!見つかったか?」
「それが見つからないんです。森も、市場も、居住区も見ました。でも、目撃情報も何もないんです・・・・・・」
「そうか・・・こっちは王宮内部と近辺を探させているところだ。しかし何の情報も得られん。やはり無理やり連れて行かれた可能性が高いだろう」
「そんな・・・・・・・・・・・・・・・」
私は言葉を失った。
大好きな、一生かけて守ると誓った人が、いないなんて。
耐えられない。でも探そうにも何も情報が得られない。
どうすればいいんだ?
「やっぱりダメだね。ここは強い人がいすぎだよ。兄さん、計画が大きすぎだよう!」
後ろから、女性の声が聞こえた。
「君は・・・シトセルさん、かな?」
シンが少し低い声で言う。
シトセル、というと、ミルカを虐めていた・・・・・・?
「うん、そだよ!第一級特異点様!!
・・・あのね、あたしたちのリーダーはね、この国を乗っ取る計画立ててたの」
実に急に、淡々と彼女は語りだす。
「でも駄目だね。ここは!・・・でも、こっちにはあの伝説の魔道士の子孫、ミルカが手に入った!それで十分だよ。だから・・・
八人将のジャーファル、あんたからあの子の全てを奪うわねっ!!」
すぐには理解出来ない台詞が私の脳を覆い尽くす。
「遅いわよ、シトセル」
別の女性の声が、聞こえた時にはもう。
私はその場に倒れていた。
「ジャーファルっ!!」
シンの声が聞こえる。私は何をされたんだ?
意識が、なくなる・・・・・・・・・
「シンドバッドさん、その他の人たちも。あの子のことはなかったことにしなさい。でないと、今度はその人の命が無いわよ」
もう一人の女性、ツミテがシンに向けた言葉は、私には届かなかった。