第4章 新しい日々
「ミルカ、ごめんなさいっ!」
キッチンについた私が一番に聞いた声は、親友のユウナの声だった。
彼女は目に涙を滲ませ深々と頭を下げていて、周りにいる料理人達は泣きながら俯いていた。
「ユウナ・・・?」
「わたし、取り返しのつかないことしちゃった・・・ごめんなさい。謝っても謝り足りないくらいだよ。みんな、見て見ぬフリをしてた。あの先輩たちが怖くて、標的にされたくなくって・・・・・・親友である私が、本来なら助けるべきだった。でも、私は怖くて怖くて何も出来なかった・・・貴女の傷の治療すらも!」
声を荒げる彼女は、いつもの優しい彼女からは想像できない声色と表情をしていた。
本当に後悔しているんだろう、親友の私を無視してきたことを。
「王様が先輩を解雇してくださったから、もう誰かがいじめられることはない。だからどうか・・・・・・料理人を辞めるとか、言わないで欲しいの。もう許してくれなくてもいいから・・・」
床に崩れ落ちる彼女は、大粒の涙を流していた。その涙を流させたのは・・・私でもある。
彼女に聞いてもらえなくても、ひたすらに話しかければ良かった。なのに何もしなかった私だって悪い。
だから私の答えは、決まっていた。
「何言ってるのよ・・・辞める気なんてないわ。確かにもう取り返しはつかないけれど、私はもう気にしていない。私は先輩に虐められたことよりも・・・・・・貴女に嫌われたと思ったことが一番悲しかった。蹴られて付けられた傷よりも痛くて苦しかった!
だから、辞めることはないわ。ただ、一つだけ聞きたいことがあるの・・・・・・・・・
これからも私と、親友でいてくれる?」
彼女と同様に大粒の涙を流しながら、私は彼女の顔を見つめて言った。
そう、私の答えは、望みは、大好きな彼女とこれからもずっと一緒にいること。彼女は幼馴染でもあって、今までずっと一緒に過ごしてきた。ここの料理人になりたいと言ったとき、私も傍で貴女と働きたいと言って一緒に料理の勉強をしたりした。
そんな彼女に嫌われるなんて、絶対に嫌だ。耐えられない!
「ユウナ・・・」
彼女の名前を呼ぶ。
大好きな親友の名を。