第4章 新しい日々
私が倒れて意識を失っている間に、ジャーファルさんはユウナから一切の事情を聞いたらしい。
そして、先輩ふたりを解雇してもらい、他の料理人にもそれを伝えたそうだ。
私の怪我の治療はヤムライハ様がしてくださったらしく、傷によっては痕すら残っていなかった。
彼と気持ちが通じてから二日立ったけど、私はまだ怖くてキッチンへ行けていない。
彼に事情を話したユウナが、怖かったからだ。
あの子も先輩のように私を憎んでいたらどうしよう。
もう話すこともできなかったらどうしよう。
幼い頃からの大切な友人である彼女だからこそ、怖いのだ。
部屋で朝食も食べすに外を眺めてため息をつく。
羽ペンを弄ぶ左手には、薄くあざが残っていた。
心がズキリとして、意識までも遠のきそうで怖くなった時、
「ミルカ、いますか?」
扉をたたく音と、ジャーファルさんの声が聞こえてきた。
力ない声で返事をして扉を開くと、彼は私を押すようにして部屋に入ってきた。
「ちょっ、ジャーファルさん・・・?」
「・・・みんな心配していますよ。非常に仕事場に行きにくい事はわかっていますが、今朝は朝食すら食べに来ていないそうですね」
そんなことまで彼に知られているとは思っていなかった。何故知っているのか尋ねると彼は、
「大好きな貴女がそんな状態じゃあ、気がかりで仕事もはかどりませんよ」
と言った。
かなわないな、と思ってくすりと笑みをこぼし、私は彼に思っていることをすべて話した。